IPSモデル援助付き雇用における「就労」とはなにか

IPS モデルは、メンタルヘルス分野におけるリカバリー志向の援助付き雇用という形の就労支援の1モデルです。

IPS では就労は治療的でスティグマの軽減に役立つと考えられ、働くことは精神障がいをもつ人たちが社会的差別や偏見から脱し、地域社会で通常の成人の役割を獲得することを可能にするための方法の一つであると考えられています。IPS の最終目標は、重度の精神障がいを持つ人たちが自分らしい生活を取り戻し、精神保健福祉サービスへの依存から脱出していくことにあります。

アメリカでは「援助付き雇用」には「train then place」と「place then train」がありますが、1986年の米国リハビリテーション法改正では重い精神障がいをもつ人のために「train then place」が制度化されています。「train then place」は訓練してから就職するというモデルであり、「place then train」はジョブコーチによる支援などを得て就職した場での訓練と継続的なサポートを得ることができ、IPSは後者の立場にあります。重い精神障がいをもつ人に対しては、この「place then train」の方がより早く旧躁的雇用に到達し、雇用も継続することが先行研究で示されています。

また、IPS では地域社会で精神疾患を持たない人たちと一緒の職場で共に働くことが本人の生活の質を高め、健康を増進させ、スティグマを軽減すると考えており、「重い精神障がいをもつ人であっても本人の興味や強みにあわせて職場を選び、働くことができる」という信念に基づいています。そのために、本人の好みを尊重することが重要です。多くの人はパートタイムの仕事に就き、週5~10時間の短時間勤務時間の者もいれば、週20時間を超える者もいます。

利用者の中には、働くことによって社会的な保障を得られなくなることへの不安を持つ方がいますが、重い精神障がいをもつ人たちは職に就きつつ社会的保障を失わない働き方を選択することも可能です。そのためにESは、これら社会保障給付への知識・情報を持ち、クライアントの不安に対応していくことになります。


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コンテンツ作成:公益財団法人 住吉偕成会 住吉病院/院長 中谷真樹