IPSユニットとはなにか

IPSでは、多職種チームによる支援が有効であると考えられていますが、そもそも援助付き雇用は精神保健サービスと統合して提供されるという前提があります。そこにはケアマネジャー、精神科医、生活支援スタッフ、他の福祉サービス提供者が含まれ、さらに本人がプランの監督者として参加し、本人の希望によれば家族や友人の参加も排除しません。

IPS のユニットは、IPS コーディネーター(IPSスーパーバイザー)1名と、1人当たり20~25名を担当するES2名以上から構成されます。ケースロ-ドは重要で、多すぎると雇用実績が低下するとされています。下図に、精神保健援助チームとIPSユニット、職業リハビリテーション部門との関係を示しました。

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図2:精神保健援助チームとIPSユニット、職業リハビリテーション部門との関係(大島, 2004)

IPS コーディネーターは、修士以上の学位と職業リハビリテーションの実戦経験を持つ者です。IPS サービスの運営と目標を理解していることが必須であり、役はESのスーパーバイズ、働きたい人の紹介、ESの業務環境を整備し、業務評価です。働きたい人にはできるだけ早くESを紹介させながらケースロードにも気を配ることが必要です。

ES(雇用スペシャリスト)ESは、それぞれの担当する人にIPS 援助付き雇用プログラムを提供し、就労に関わる責任を負います。また、精神保健援助チームと協働してIPS プログラムを進め、外部機関と連携していきます。IPS は重い症状をもつ人や就労経験が乏しい人をプログラムの対象から排除しないため、ESは競争的雇用に関心をもつすべての利用者を支援します。ESには学歴や職歴も重要ですが、その人柄は重要です。精神保健福祉サービスの外側で本人や雇用主、精神保健福祉のスタッフとネゴシエーションを行う楽天的な人物である必要があります。失敗をネガティヴにとらえずに、すべての経験から何らかの学びを得て今後に生かしていくことができるという考え方を持つ人が望ましいです。

つまり、雇用マーケットにおける職場確保のための知識と経験を持ち、雇用主との関係構築のスキルがあり、利用者の興味や長所を引き出して就職意向とマッチさせ、長期支援の体制をとることができ、さまざまな精神疾患についての知識がありつつ、社会保障制度の知識も有しながら、本人の希望をうまく伝えることができる人、ということになります。このような活動のできる専門職は多くなく、わが国では精神保健福祉士、作業療法士、看護師、社会保険労務士、さらに企業の人事担当者など、国家資格の有無を問わずさまざまです。(大島, 2004)


  • 大島巌、松為信雄、伊藤順一郎監訳:精神障害を持つ人たちのワーキングライフ。今剛出版,2004、原著:Becker DR and Drake RE:A working life for people with severe mental illness.Oxford Univ Press,2003

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コンテンツ作成:公益財団法人 住吉偕成会 住吉病院/院長 中谷真樹