IPSフィデリティ尺度

IPSフィデリティ尺度とは

フィデリティ尺度とは、サービス提供機関や事業所が、科学的に効果が実証された実践(サービス供給体制)をどの程度再現しているかを測定する組織評価のツールです。IPS モデルは、精神障がい者を持つ人に対して、従来の職業リハビリテーションサービスよりも高い就労アウトカムをもたらすというエビデンスが確立しています。特に、IPSモデルでは、従来は働くことができないと考えられてリハビリテーション施設や地域施設に留め置かれていた、重い精神障がいを持つ人でも競争的雇用に就くことができる可能性が示されています。IPSモデルが地域で実際に運用され、効果を上げるためには、サービスの質を保証する必要があることから、BondらはIPS-15というフィデリティ尺度を開発しました。彼らの働きかけによって、SAMHSA(アメリカ合衆国保健福祉省 薬物乱用・精神衛生サービス局)は、各機関にIPS-15を用いて自機関のサービス評価を実施することを推奨しています。さらに、Dartmouthの研究グループは2012年に実践者と共同して開発したIPS-25という新しいフィデリティ尺度を発表しています(Bond et al, 2012)。2016年5月において、Dartmouthの研究グループはIPS-25を用いてIPSモデルのサービス評価を実施することを推奨していますが、SAMHSAはIPS-25ではなくIPS-15のみを推奨しています。

IPSフィデリティ尺度(IPS-25)は、スタッフ配置・組織・サービスの3つの下位尺度を持ち、IPSモデルの8原則についての評価項目を含む25の評価項目で構成されています。IPS-25を用いることによってIPSモデルの構成要素の基準に対する適合度や、改善点に関する情報を得ることができます。フィデリティ得点の高いプログラム(機関や事業所)は、低いプログラムよりも、就労アウトカムに関してより効果的であることが示されています(Bond et al, 2012)。

わが国においては、IPS-25の日本語訳版が紹介さています。また、国立精神・神経医療研究センター社会復帰研究部が中心となって開発した日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度も、IPSモデルやIPS-25に基づいて作成されたものであり、日本におけるIPSに基づく就労支援の評価ツールとして位置付けています(下平, 2014)。



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