アルコール・薬物依存症患者に対する標準的就労支援に対する個別職業紹介・支援の優越性と費用効果:実践的、並行群間、非盲検、第3相多施設共同無作為化比較試験

No 00079
和題(和訳) アルコール・薬物依存症患者に対する標準的就労支援に対する個別職業紹介・支援の優越性と費用効果:実践的、並行群間、非盲検、第3相多施設共同無作為化比較試験
文献情報 Marsden J, Anders P, Shaw C, Amasiatu C, Collate W, Eastwood B, Horgan P, Khetani M, Knight J, Knight S, Melaugh A, Clark H, Stannard J: Superiority and cost-effectiveness of Individual Placement and Support versus standard employment support for people with alcohol and drug dependence: a pragmatic, parallel-group, open-label, multicentre, randomised, controlled, phase 3 trial. Eclinicalmedicine 68:102400, 2024.
DOI 10.1016/j.eclinm.2023.102400
URL https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2023.102400
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抄録(和訳)

【背景】

Individual Placement and Support(IPS)は、開かれた競争的な労働市場での雇用を得るための専門的介入である。IPSは重度の精神障害や他の障害において開発されたが、アルコールおよび薬物依存症の人々に対する効果は不明であった。アルコールおよびドラッグ当事者向けIPS(IPS-AD)は、その効果と費用効果を評価する最初の優越性試験である。

【方法】

IPS-ADは、標準的就労支援(通常治療, treatment as Usual: TAU)とIPSを比較した実用的な、実践的、並行群間、非盲検、第3相多施設共同無作為化比較試験であった。IPSは最大13か月間の単一介入として提供された。本研究は、イングランドのアルコールおよび薬物依存症のための7つの地域治療センターで実施された。研究参加者は、アルコール使用障害(alcohol use disorder: AUD)、オピオイド使用障害(opioid use disorder: OUD)、または他の薬物使用障害(drug use disorder: DUD, 主に大麻と刺激物)の治療を少なくとも14日間受けていた18歳から65歳までの大人で、少なくとも6か月間失業または経済的に非活動的であり、開かれた競争的な労働市場で雇用を得たいと希望している人々であった。研究介入への無作為割り当て後、主要なアウトカムは18か月のフォローアップ中の雇用であり、欠損データの管理に多重代入法を使用した混合効果ロジスティック回帰によって分析された。費用効果は2つアウトカムで分析した:1つは、健康関連アウトカムであり、£30,000および£70,000の支払い意思額(willingness-to-pay: WTP)を閾値として使用した質調整生存年(Quality-adjusted life years、QALYs)を算出した。もう1つは、就労日数が1日増加分の費用であり、支払い意思額(WTP)の閾値を£200に設定した。この研究はISRCTN(ISRCTN24159790)に登録され、完了した。

【知見】

2018年5月8日から2019年9月30日の間に、適格基準に合致する2781人の潜在的参加者が特定された。812人がスクリーニング前に除外され、1720人の参加者がTAU群またはIPS群に無作為に割り当てられた。誤って、9人の参加者が2回にわたって研究介入に無作為化されたため、最初の無作為化のデータが分析された(修正版Intention to Treat analysis)。さらに24人の参加者がすべてのデータの使用について同意を撤回したため、全分析セットは1687人の参加者であった(男性70.1%; 平均年齢40.8歳; TAU群 844名; IPS群 843名; AUD 610名; OUD 837名; DUD 240名)。TAU群における844人の参加者のうち559人(66.2%)が標準的就労支援を受けた。IPS群における843人の参加者のうち804人(95.37%)がIPSを受けた。TAU群と比較して、IPSは雇用率の増加と関連していた(調整後オッズ比 [OR] = 1.29, 95%CI = 1.02–1.64, p=0.036)。IPSはAUDとDUDのグループに対して有効であった(AUD; OR = 1.48, 95%CI = 1.14–1.92, p = 0.004, DUD; OR = 1.45, 95%CI = 1.03–2.04, p = 0.031)。しかしながら、OUDグループには効果が観察されなかった。IPSは、参加者1人当たり0.01(範囲0.003-0.02)のQALY増加効果を示し、いずれのWTP閾値においても費用対効果の証拠は示されなかったが、AUDグループとDUDグループIndividual Placement and Support(IPS)は、開かれた競争的な労働市場での雇用を得るための専門的介入である。IPSは重度の精神障害や他の障害において開発されたが、アルコールおよび薬物依存症の人々に対する効果は不明であった。アルコールおよびドラッグ当事者向けIPS(IPS-AD)は、その効果と費用効果を評価する最初の優越性試験である。

【解釈】

アルコール依存症および薬物依存症におけるIPSの初の優越性無作為化比較試験において、標準的就労支援と比較し、IPSはより多くの人々がオープンな競争的労働市場での就労を達成するのに役立った。IPSは、AUDグループとDUDグループのQALY健康アウトカム(WTP閾値70,000ポンド)、AUDグループの追加就労日数(WTP閾値就労1日あたり200ポンド)に対して費用対効果があった。