低・高フィデリティの援助付き雇用プログラムと現実世界における多様なアウトカムとの予測的な関連:多施設共同前向き縦断研究

No 00062
和題(和訳) 低・高フィデリティの援助付き雇用プログラムと現実世界における多様なアウトカムとの予測的な関連:多施設共同前向き縦断研究
文献情報 Yamaguchi S, Sato S, Shiozawa T, Matsunaga A, Ojio Y, Fujii C: Predictive association of low- and high-fidelity supported employment programs with multiple outcomes in a real-world setting: A prospective longitudinal multi-site study. Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research, 2021. [Epub ahead of print]
DOI 10.1007/s00127-021-02088-8
URL https://doi.org/10.1007/s00127-021-02088-8
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抄録(和訳)

【目的】

援助付き雇用のIPS(Individual Placement and Support)モデルは、コミュニティメンタルヘルスサービスにおける代表的なエビデンスに基づく実践(evidence based-practice)である。日本では,IPSモデルの理念に基づいた個別型援助付き雇用雇用が実施されている。プログラムのフィデリティ(忠実性・再現性)と競争的雇用を獲得する参加者の割合との関連性を示す多くのエビデンスがある一方で、フィデリティと職業上および個人の様々なアウトカムとの関連性については、あまり調査されていない。本研究は、低いフィデリティの個別型援助付き雇用の事業所(低再現群)と比較して、高いフィデリティの個別型援助付き雇用の事業所(高再現群)が、就労アウトカム、希望する仕事での就職、患者報告式アウトカム尺度の点で優れているかどうかを評価することを目的とした。

【方法】

24ヵ月間の追跡調査による前向き縦断研究で、16の個別型援助付き雇用事業所を分析した。個別型援助付き雇用フィデリティ尺度(JiSEF)用いて、個別型援助付き雇用の構造的な質を評価した(得点:低再現群、≦90;高再現群、≧91)。仕事の獲得、仕事の在職期間、仕事の収入、仕事の好みのマッチング(職業の種類、給与、障害の開示など)、INSPIREやWHO-Five Well-being index(WHO-5)などの得点について、群間で比較した。

【結果】

低再現群(6機関)と高再現群(10機関)で、それぞれ75名と127名が参加者となった。高再現群は、低再現群よりも良い就労アウトカムを示した。具体的には、高い就労率(71.7% vs 38.7%, 調整済みOR = 3.6, p = 0.002)、より長い勤続年数(調整済み平均差=140.8, p<0.001)、障害開示の希望との一度(92.6% vs 68.0%, 調整済みOR=5.9、p=0.003)などであった。しかしながら、その他の希望の一致度や患者報告式アウトカム尺度の結果については、グループ間の差が認められなかった。

【結論】

忠実性・再現性の高い個別型援助付き雇用は、現実世界において良好な職業的アウトカムをもたらした。しかしながら、今後は、希望する仕事での就職を増やし、患者報告式アウトカム尺度の改善を目指して、サービスの質を高めることが重要なとなる。