Q&A

IPSについて、よくいただくご質問に、複数のIPS実践家・研究者・運営者などなどで回答いたしました。

回答
まず、その仕事に関係する資料を集めて共有したり、可能であればその仕事に関連する職場の見学に行きます。その上で実現するにはどのようなプロセスが必要か一緒に確認します。

回答
求人はハローワークだけではありません。書店やコンビニで売ってい求人誌、ネット上のものや 店頭の張り紙など様々です。そこから、希望する職業に関連するものをあらゆるところから一緒に探していきます。その仕事をしていくために大切なことを一緒に考え、そのから希望に向けた仕事を探していくこともあります。何社でも探していきます。

回答
障がいの有無にかかわらず、それらの職に就いている人が通っている道を進むことを応援します。映画監督や研究者はどのようにその職を得ているのでしょうか?そのために苦労していることは何でしょうか?その仕事にあって感じられる喜びは、そんな見えない部分があってなしえていることなので、その苦労を選択できるよう応援します

回答
希望すれば誰にでも支援を提供するので、「働きたい」と希望される方すべてが適合します。就職の可否よりも、職探しのプロセスから人として学ぶことが大切だからです。

回答
IPSでは除外基準がありません。誰もがそこからどう働けるかを一緒に考え個別にかつチームでサポートしていきます。精神障害者を対象に始まったIPSですが,最近の研究では、発達障害、PTSD、脊髄損傷のある人、生活困窮者、犯罪歴のある人、学生などその対象も広がってきています。働くことによるリスクよりも得られる利点の方が上回ると感じるようになったら,その時が紹介のタイミングだといわれています。

回答
どんな病気や障がいを抱えていても働きたい思いがあればだれでも働ける、これが私たちが一番大切にしているものです。実際に入院中から利用手続きを行い、退院後すぐに利用された方もいます。障がいも精神だけではなく、高次脳機能障がい、透析治療中の方、聴覚障害・難病、犯罪歴のある方も利用されています。私たちは、働きたい思いがあればだれもでも支援していきます。思いがあるときに動くことが就職につながります

回答
「働きたい」と思うすべての人がこのサービスに向いている方です。しいて言うならば、よりその気持ちが強ければ、より向いていると思います。きっかけは様々ですが「できるかどうかはわからないけど・・・」と言いながらもチャレンジしたいと思ったときに尋ねられている方も多いような気がします

回答
障害をオープンにするかどうかは本人が決めます。ただし、各選択の良い点、悪い点を一緒に確認したり、離職などのタイミングで定期的に意思を確認します。

回答
障害のオープン・クローズについては本人が決めます。各選択の良い点、悪い点を一緒に考えますが、良い悪いでは語れない経験をされてきた方も多いので、本人の希望を尊重することを大切にしています。

回答
IPSでは障害を開示するかどうかもクライアントの好みを重視します。IPSは共同意思決定Shared Decision Makingという考え方が根底にあります。障害をオープンにするかクローズにするかメリット、デメリットを提示して本人が決定していくプロセスをとても大切にしていきます。実際に当院の昨年度の就職者は障害者雇用よりも一般雇用(セミオープン含む)で働いている方の方が半数を上回っています。

回答
働きやすさは人によって違います。病気や障がいをオープンにするかは本人が決めることです。一般の求人でもオープンにして就職が決まっている方が毎年約半数以上います。どんな病気や障がいを抱えていても選択肢は誰でも同じようにあります。同時に障がいをオープンにするかどうかも、本人の考えが第一に尊重されます。

回答
オープン/クローズは、お一人お一人がどのような選択をしたとしてもご本人の選択を尊重しています。なぜならば、私たち支援者はそれぞれの人生を肩代わりすることはできず、その責任も喜びもその方のものだと考えるからです。そのかわり、積極的にそれぞれが責任もって人生を謳歌できるように応援します

回答
体調や家族のこと、金銭的なことなど就職活動を進める中で抱える問題はそれぞれにあります。お話を伺っていく中で本人希望や同意があれば通院先への同行や行政機関、相談室を含めた専門機関などへ同行します。スタッフ間のミーティングの中でCM(生活支援員)の見解は多面的な見方ともなり就職活動を進めていくうえでとても重要な役割を果たします。

回答
仕事や働くといったテーマ以外の事は、生活支援のスタッフが主に応援しています。生活や毎日をより良くするためにとりくみたいことは何か、生活支援員がどの部分をお手伝いできそうか、話し合いながらすすめています。具体的には、美容室を探す、買い物にご一緒する、マインドフルネスを一緒に学ぶ、問題解決のための窓口を探してご一緒する、献立や食事つくりの練習、婚姻等の書類サポート、散歩、ご実家からの独立のお手伝い、家計簿を漬ける練習などなど、内容も方法も多岐にわたっています。

回答
ありません。ですが、本人ができることが増えるにつれ、本人に任せ、支援量を減らし、最終的に支援を卒業できるよう心がけます。

回答
必要な期間、本人に合った支援の種類や頻度で、継続的にフォローしていきますが、安心して腰を落ち着けるようになると、IPS支援の終了について協議します。終了が決定されると、ケアマネージャーや精神保健スタッフが引き続き就労支援を提供していきます。また、本人が希望する場合は、家族、友人、ピアサポートサービスを提供している団体や雇用主が担うこともあります。

回答
支援は必要とされる限り提供されます。安定した就労生活が続いていれば、支援の終了を検討します。安定した就労生活の期間の目安は1年とされています。

回答
IPSでは支援に期限を設けていません。しかし、日本でIPSを実施する際、期限のある福祉サービスで取り入れていることも多く、そういう場合、福祉サービスの利用期限に合わせてIPSでの就労支援も区切りを迎えることが多くあります。ただ、多くの事業所が「サポートが必要と感じたら、またいつでも連絡くださいね」という姿勢で運営しておられるようです。実際、障害福祉サービスの利用期限が終了していたとしても、IPSユーザーとIPS事業者が必要に応じて連絡を取り合い、サポートを行ったり検討したりといったことが行われています。また、IPSの支援終了時にも、必要に応じたサポーターを検討したり、期限のない支援機関をご案内するなど、サポートに関してもご本人のご希望が最大限反映されるよう、ともに知恵を絞り工夫を重ねています。

回答
IPSの提供事業者ごとに違います。運営母体や、利用者さんの経済状況によっては、自己負担なくご活用できる場合もあります。詳しくは、各IPS実施機関にお問い合わせ頂くと、正確な情報が得られるかと思います。

回答
IPSを実践している機関は、日本IPSアソシエーションのホームページで調べることができます。今のところ、国内でIPSとしての質の評価を受けている機関は20ほどで、日本のどの地域でも活用できるまでにはなっていません。

回答
先駆的取り組みとして収益性を重視せず実践しているところもあります。デイケア利用、訪問看護の併用で収益を上げたり、福祉就労事業を併設している機関では利用者が一般就労に移行することで就労移行体制加算が算定できます。

回答
当院の場合は、IPSは医療機関を利用される患者さんへの法外サービスとして行っています。就労支援を目的に通院に繋がり、IPSとともにデイケアのプロフラムや訪問看護を利用し他機関と連携することもあります。将来的にはIPSが診療報酬に繋がり、どこの地域で暮らしていてもIPSを利用できるようになることを期待したいと思います。

回答
薬剤調整はとても大切です。診察室だけではわからない仕事を妨げる症状や副作用が就労支援スタッフから伝えられることで、精神科医が本人に合った処方調整を行うのをとても助けています。

回答
就労支援のプロセスで副作用の少ない新薬に変更して自分らしく働いている方を多く見てきました。例えば、また薬を飲み忘れてしまう方で働くことに障壁があった方も、話し合いをした上で持効性注射剤に変更した結果、薬を飲まなければいけないストレスが少なくなり、働いて充実した生活を送られている方もいます。IPSの継続的なアセスメント(キャリアプロファイル)を作成する上で、就労スペシャリストは、服薬管理や副作用についても尋ねていきます。これらを主治医などと共有していくことで治療に役立てて頂いています。

回答
本人が、今から働きたいと希望すれば支援は開始します。就労支援と治療は並行して行えます。同時に行うことで、本人が服薬の必要性を認識したり、治療者が現在の処方の問題点に気づくこともあります。

回答
国際的に、職業準備性の向上を図る訓練型(標準型)就労支援と比較し、IPSの就労率は2倍から3倍高く、就労期間も長いとされています(例:Bond et al, 2012)。日本のIPSにおいても同様の効果が確認されています。

回答
とても大切です。IPSの創始者の一人、デボラ・ベッカーさんは、「誰でも働くことができると信じられる人」なら誰でも素晴らしいIPS支援員になれると述べています。さらに、米国のIPSスーパーバイザーは、人材育成、特に前向き思考を高める指導が一番大切と述べています。

回答
IPSは米国等で就労スペシャリストやスーパーバイザー向けの体系的な研修がコロナ禍においてもオンライン等で実施されています。この研修では、就労支援の一連のプロセスのみならず、関係作りのための効果的な面接スキル、物質使用障害など重複障害、犯罪歴のある人、就労について考える援助、精神保健治療チームの実践者やスーパーバイザーの役割まで学ぶことができます。この内容は、IPSの実践マニュアルの邦訳書『IPS援助付き雇用』(金剛出版、2021)で学ぶことができますが、ニーズに沿って日本IPSアソシエーションのメンバーが研修を行うこともできると思います。国内でもエビデンスに基づいた就労支援の政策が打ち出され、IPS援助付き雇用の体系的研修が展開されていくことを願っています。

回答
人材育成は重要なことです。ただその人材育成はIPSの実施と同じように、Place then Trainが重要になります。支援者も実際の仕事をしながら試行錯誤し、その試行錯誤を支える人材育成が理想と思います

回答
ご両親と本人を交えた面談を辛抱強く行います。そのミーティングに主治医を交えると効果的です。家族は病状が悪くなることを心配することが多いからです。

回答
大切なのは、本人の思いを尊重することです。その中で、ご両親を含めた面談を行うこともあります。どんな状況にあっても、これからどうしていくかは本人が決めていくことです。私たちは、ご本人が決断されたことを応援していきます。

回答
反対される背景にどのようなことがあるのかを考えながら支援を考えます。実際にはご家族以外にもその方の周囲のサポーターが反対することも少なくありません。それらの方も、悪意ではなく「良かれと思って」反対されていることも多いでしょう。それを理解しながら、何よりもご本人の希望を中心に支援していきます。

回答
働くことは強要されるものではないです。しかし、押し付けにならないよう注意しながら、時々働くことを話題に出したり、その人の就労の可能性を伝えることはします。というのも、長く周囲からの批判にさらされ、働けないと信じ込んでいることも多いからです。

回答
働くことを希望しないというお考えも、もちろん尊重されるべき大切なお気持ちと考えています。

回答
「働くことを希望しない権利」がどのような権利なのか測りかねますが、IPSは「働きたい」方へのサービスのため「働きたくない」という方はまた別のサービスを利用するほうが良いのではないかと考えます。これは「働きたくない」という思いを否定するものではなく、働きたい希望を持った時に利用していただければよいという意味です。

回答
島根県浜田市で行われているIPSチームは、300以上の職場訪問をして、雇用主の意向を調査していますが、50%を超える雇用主は精神疾患の経験がある、あるいは治療中の方の雇用に前向きであることを確認しています。

回答
IPSは企業の方と関係を築きながら企業側のニーズをキャッチしていきますので、多くの企業の方に関心を持っていただいています。また企業向けのセミナーでも度々IPSを紹介させていただいています。中でもシステマティックな職場開拓やサービスの質の改善を目指すフィデリティ調査、医療のサポートは心強く感じられるようです。

回答
毎年30名以上の方が一般企業に就職します。障がいを開示して就職される方は一般求人を含めて9割を占めます。企業によってどんな人を求めるかは様々です。病気や障がいを抱えているか以前に、なぜその企業で働きたいのか、働いてどうなりたいのかが大切なのだと思います。企業はやる気、思いがある人を求めます。だからこそ、私たちは、あなたがどうなりたいのか、どんな人生を送っていきたいのか、希望を聞き、それを応援します。

回答
理解してくれる企業も少なくはありません。しかし、それでも一人一人違う状況の方をあらかじめ理解するのは難しく、採用や業務の中で、ともに相互理解を深めていくことのほうが多いような気がします。