日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度とは?

日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度は、国立精神・神経医療研究センター社会復帰研究部の研究員と日本でIPS型のサービスを提供する機関のスタッフが共同して、IPS-25(IPSフィデリティ)をもとに作成したフィデリティ尺度です。3つの下位尺度(スタッフ配置・組織・サービス)や25項目の評価内容は、基本的にIPS-25と同じ構成となっています。IPS-25と異なる点は、1) フィデリティ尺度とセットとなるGeneral Organization Index(GOI)という基本的な組織枠組みについてのチェックリストを作成したこと、2) 精神保健福祉サービスとの連携のあり方を日本の制度に合わせて調整したこと、3) 就労支援員の包括的なサービス提供のあり方や迅速な就労サービス提供のあり方、スーパーバイズシステムのあり方の項目等についての採点方法があげられます(日本版援助付き雇用フィデリティ参照)。

これらの修正を加えた理由は、大きく2つあります。第1に、精神保健サービスシステムの違いが挙げられます。米国や精神保健サービスの先進国である欧州の国々で、IPSモデルが実施されるのは、地域における精神保健サービスの基幹組織として位置付く、地域精神保健センター(Community mental health center)であること多いです。地域精神保健福祉センターでは、ケースマネージャーが主要な役割を担いながら、医療サービス、機能的リハビリテーション、生活支援、就労支援(IPSが取り組まれている場合)などが包括的に提供されています。他方、日本では地域精神保健センターにあたるサービス提供機関はなく、精神科病院、精神科クリニックや地域の福祉サービス事業所が精神障害者の生活支援や就労支援を担っています。どちらのシステムの長所と短所があると思いますが、このような制度的な解離の中でIPS-25では評価しづらい項目があり、日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度の中で、日本の制度に合わせて評価項目を調整しました。第2に、評価方法について、IPS-25には全件レビューや複数回の訪問などを前提とした評価を求める項目や、スーパーバイザーによる記録の参照を必要とする評価を求める項目、あるいは評価内容が不明瞭な項目があります。これは、言い換えると、詳細な記録や個別スーパーバイズの体制、州政府のフィデリティ調査員の存在があって可能になる評価システムです。また調査にかなりの時間を要すると予想されます。そこで、日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度は、可能な限り既存の記録で評価ができること、評価に莫大な時間を要さないこと、評価基準が明確であることを前提に評価方法を調整しました。

フィデリティ尺度はある実践の理念や哲学をスタッフの行動レベルで測定しますが、アウトカムを予想することも期待されます。2015年度の調査において、日本版個別援助付き雇用フィデリティ尺度は、就労率との高い相関を示しています(r = 0.712, n = 14)。


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