「私たちと同じように働ける人たちだ」:Individual Placement and Support(IPS)の実装における臨床的抵抗の克服と見解の転換

No 00069
和題(和訳) 「私たちと同じように働ける人たちだ」:Individual Placement and Support(IPS)の実装における臨床的抵抗の克服と見解の転換
文献情報 Sharek D, Lally N, Brennan C, Higgins A: “These are people just like us who can work”: Overcoming clinical resistance and shifting views in the implementation of Individual Placement and Support (IPS). Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research, 2022.
DOI 10.1007/s10488-022-01204-3
URL https://doi.org/10.1007/s10488-022-01204-3
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抄録(和訳)

【目的】

Individual Placement and Support(IPS)は、精神保健上の困難を抱える人々の就労復帰を支援するためのリカバリーに基づくアプローチである。しかしながら、IPSの実装に携わる多職種チームが、このプロセスをどのように進めているかを調べた研究はほとんどない。本稿は、アイルランド共和国の国家的な改革プログラムの一環として、IPSの就労支援専門員(Employment Specialist:ES)と作業療法士(OT)の管理者が、従来型の多職種チームの中でIPSをどのように統合し、組み込んでいったかをについて調査する。

【方法】

本研究のデザインは質的、記述的であり、17名のESと11名のOT管理者との3回のフォーカスグループを通じてデータを収集した。データは、テーマ分析を用いて分析された。

【結果】

分析から3つの主要なテーマが浮かび上がった。1つ目は、IPSの置かれた状況を特徴づけるもので、臨床的抵抗、疑い、リスクへの恐怖が特徴的なものとして抽出された。2つ目は、アイルランドの精神保健サービスにIPSを導入する際に役立った戦略や要因を探るものである。これには、IPSに関する教育や情報の提供、およびIPSのガバナンスや就労支援専門員の能力について多職種チームで再確認をすることなどの戦略が含まれた。IPSのエビデンスに基づく性質とフィデリティの測定による説明責任は、IPSの受容の重要な要因であると認識された。最後のテーマは、IPSが精神保健上の困難を抱える人々に対する多職種チームの見解にどのような影響を与えたかについての認識を要約したものである。調査結果は、多職種チームのクライエントに対する見方が変化したことを示唆した。労働能力やリスクに関する当初の懸念は、「サービス利用者」というラベルや診断名を超えて人々を見る方向にシフトしていった。

【結果】

IPSは、実践者が真のリカバリー志向型の実践に取り組むことを可能にするアプローチであり、リカバリーアプローチが真に精神保健サービスの提供に浸透し、精神保健システムの改革を支援する方法を解く一つの鍵になるかもしれない。